佐藤 博幸先生
昨年は演奏をする機会も、また演奏を聴く機会も奪われてしまいましたが、今回コンクールが再開されることとなり、皆さんの秘めたピアノを演奏する喜びが一気に湧き出たような、素晴らしい演奏を楽しめた一日となりました。
作品に真摯に向き合って練習を重ねてきた演奏者と、支えるスタッフの皆様に、改めて感謝申し上げます。
単に“曲”といっても、基礎部門で演奏された短い曲から規模の大きな曲まで様々ですが、このことは、幼児の頃の「嬉しい」「悲しい」「可笑しい」といった一次的な感情から、成長するに従って「~だから嬉しい」「~があったから悲しい」と、それぞれの感情に意味づけをするようになり、更に「あの時の事をもう一度思い出してみる」とか「懐かしい」といった感情が生まれる、私たちの成長のいち過程に良く似ていると思います。
私たち作曲家は、こういった感情の一コマを音楽作品として表現するために、単語を覚えたり文法を覚えたりするのと同様、ソルフェージュや和声や対位法といった書式を学ぶのですが、勿論子供が短期間で大人が使う言語を習得して大人の感情表現が出来るわけが無いように、作曲をするにしても演奏をするにしても、音楽はある程度の時間をかけて様々な経験を積んだり試行錯誤を繰り返しながら徐々に習得してゆくものと考えます。
今回演奏された皆さんは、それぞれの過程に応じた演奏技術を身に付けているわけですが、その身に付けた演奏技術を生かすためにも、演奏を仕上げるにあたって、次々に現れる新たなフレーズをどのように表現するかその弾き方を考えたり、似たようなフレーズが次々と現れることに気づいたり、途中転調する箇所へどのようにして入っていったらよいかその弾き方を考えたり、リズムの特徴を知ったり等、これらのことを譜読みの段階で、年齢に応じて、決して背伸びすること無しに、じっくり時間をかけて試行錯誤をしながら仕上げてほしいと思っています。
そのことによって、音楽への興味が更に深まることを期待しています。
松山 裕美子先生
「昨年からのコロナ禍の中、皆さん本当にピアノを練習することやレッスンに通うこと、大変だったと思いますが、良く頑張って今回コンクールに参加してくださったと思います。
ご父兄の方々、先生方、楽器店の方々、ありがとうございました。
皆さんの演奏を楽しく聴かせていただきました。
全体の講評ですが、一番気になったのは、楽譜に対しての向き合い方でした。
譜読みの音ミスがけっこうありました。また、曲のテンポなども楽譜を見ながら学習していただくと、適切なテンポなどがわかるかと思いました。
それから、フレーズについてです。
音楽には必ずフレーズがあります。それは音楽はそもそも歌うことが基本だからです。
そのフレーズもメロディを声に出して歌ってみていただくと、自然にわかってくるのです。
それからバッハが課題に出ている級ですが、バッハ曲は拍子と拍がとても大事ですので、そこを基本にして弾くことが大事だと思います。
インヴェンションやシンフォニアはさらにテーマということが大事になります。今回そのテーマへの意識が少し足りないように感じました。テーマとテーマ以外の声部のバランスも研究していただくといいと思いました。
でも皆さんとても意欲的に演奏なさっていたので、それはとても良かったと思います。
学校生活や塾や習い事が多い中でピアノを練習することは、本当に大変なことだと思います。でも音楽を(ピアノ)を続けていることは、必ず将来の全てのことにつながっていくと私は信じています。ですので、皆さんもこれからますます楽しくピアノを続けてくださいますようにと、心から応援しながら講評とさせていただきます。」