山形県鶴岡市のピアノ教室 – ヤマハ音楽教室とピアノ調律、楽器販売、本格的なレッスンを行っています

審査員講評

審査員長の中野孝紀先生より講評を頂きました。

以下審査員長講評

昨年は中止となってしまったコンクールですが、今年はコロナ禍での開催となり8月28、29日の二日間に渡って本選会が無事に終了しました。

残念ながらやむ無く欠場された方もいらっしゃいましたが、不自由な日々の中で本選に向けてしっかりと準備してきた出場者の皆さんと先生方のご指導に対して本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

基礎A B部門から初級、中級、上級A B部門まで総勢171名の演奏をじっくりと聴かせて頂きました。

全体の印象として、ピアノを始めてから何年も続けていくに従って当然ながらピアノという楽器を通して音楽の表現が豊かになっていくということです。人それぞれの性格や感性の違いが、同じ課題曲でも違ったアプローチで取り組んでいる様子が伺えました。

まだピアノを習い始めて間もない基礎A B部門では、大きなホールや大きなコンサートグランドピアノに対して恐る恐る弾き始める方も多く見受けられました。普段家では電子ピアノやキーボードで練習してる方も多いかもしれません。一見多機能でピアノらしい電子音が出るものですが、本物のピアノとはタッチ感や響き方がまるで違うので、なるべく本物のピアノに触れる機会を多く持ちましょう。まずピアノという楽器に馴染むことが大事だと思います。

初級A部門まではタッチの浅さや不完全さが目につきました。楽器に馴染むことによって早い時期からもっと伸び伸びとピアノを弾けるようになるといいなと感じました。初級 B部門になるとだいぶタッチや音がしっかりしてきた印象です。次に大事なことは拍感をもって弾くことです。どんな曲にも拍子があり、大きく2拍子系か3拍子に分かれます。そこには強拍と弱拍があり、拍感を体得することは弾き始めるタイミングをとりやすくし、舞曲やワルツなど自然にアクセントがつくポイントが見えてきます。演奏の中には正確に数えて弾いているの

に変な場所にアクセントがついてしまったりバランスを欠いてしまっているケースが多く見受けられました。ピアノに馴染んできたら今度はぜひともリズム感を鍛えましょう。リズム感のよさは一生の財産になります。

さて、中級以上になるとバッハが課題のひとつになったり曲の難易度が上がって音楽的な要求度も増してきます。皆さんは予選を通過してきたので一定のレベル以上の演奏をされていました。ここで大事になってくるのが、よりレガートで弾くこと、音が多くなるので響きのバランスをとること、fとpだけでなくその間にある抑揚をしっかりと表現することです。ピアノでメロディーを歌うように弾くには、音と音のつながりをなめらかにつなげる必要があります。一音一音を同じ強さでタッチすると打鍵した瞬間の強い音が並んでガタガタしてしまいま

す。メロディーをきれいに弾くために声で実際に歌ってみましょう。スラーやレガートで弾くことはピアノが上達する上で欠かせない要素になります。同時に歌心を育むことは自然に抑揚ある表現に繋がり、リズムや伴奏型など全体の響きのバランス感覚を磨くことでピアノの本当に美しい演奏ができるようになります。上級部門では手や指の動きだけで弾くのではなく、手首や腕の動き、ひいては指揮者のように体全体で演奏する姿勢が必要になってきます。緊張して固まってピアノに向かうのではなく、自然体で呼吸を楽にしてピアノと音楽に向き合い

ましょう。中高生までずっとピアノを続けてこられたのは素晴らしいことです。音楽表現は基本的なことの積み重ねの上に成り立っていますが、その表現の可能性は無限大であり、皆さん一人ひとりの音楽的な感性を思う存分に表現できるのがピアノだと私は思っています。

いろいろな注意点や問題の指摘なども個々の講評用紙には書かれていると思いますが、ピアノを弾くことへのエールだと思って下さい。そしてまた新たな曲を楽しく練習し始めましょう。

本日は皆さんの立派な演奏をどうもありがとうございました。

審査員長

中野孝紀

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